米国平和研究所(USIP)は、これまでにない政治的嵐に見舞われている。
3月15日、トランプ政権は同研究所の理事会メンバーのほとんどを突然解任し、新たな暫定会長を任命。
その後、政府効率部(DOGE)の職員をワシントンD.C.警察の護衛のもとで研究所本部に派遣し、実質的な乗っ取りを試みた。
この動きは激しい論争と法的闘争を引き起こしている。
AP通信によると、USIPは1984年に米国議会によって設立された独立系非営利団体であり、連邦政府機関ではない。
しかし、トランプ政権は強行的に理事会を再編し、国防長官ピート・ヘグセス、国務長官マルコ・ルビオ、国防大学学長ピーター・ガービンがケネス・ジャクソンを新たな暫定会長として任命し、元暫定会長ジョージ・ムースを解任した。
USIP側はこの人事を強く非難し、新体制を認めないと声明を発表した。
事態は3月18日にさらにエスカレートした。
CNNの報道によると、DOGEの職員がワシントンD.C.警察と共に研究所の建物に強行突入し、警備員との衝突が発生した。
ムースは「これは違法な接収だ」と憤慨し、研究所の独立性が侵害されていると警告した。
驚くべきことに、ワシントンD.C.警察は最終的にDOGE側に加担し、彼らの建物への侵入を支援した。
この事件は米国政界に衝撃を与え、民主党のドン・ベイヤー下院議員は現場に急行し、「これは明らかに違法であり、議会で対応する」と非難した。
現在、USIPはトランプ政権の介入に対抗するための法的措置を準備中である。
専門家は、この機関の独立性を維持できるかどうかは、裁判所がその法的地位をどのように解釈するかにかかっていると分析する。
一方、トランプ政権はこの動きを擁護し、「米国の安全保障政策と戦略目標を一致させるために必要な措置」と説明している。
この問題は、政府によるシンクタンクへの政治介入がどこまで許されるのかという根本的な問いを投げかける。
学術機関が政府の直接的な影響を受けるようになれば、政策の客観性が損なわれる可能性がある。
この事態が示すのは、単なるUSIPの危機ではなく、民主主義制度そのものの独立性が試されているという現実である。